菊芋って何?


目次

1. 菊芋基本情報
2. 菊芋ってどんなもの?
3. 菊芋の特長
4. 菊芋の利用法
5. 菊芋に含まれる成分
6. 菊芋の歴史
7. 菊芋の栽培と保存方法

菊芋基本情報

きくいも(菊芋)の学名    Helianthus Tuberosus
きくいも(菊芋)の俗称
  • 英米 Jerusalem Artichoke
  • ドイツ Knollen-Sonnenblume
  • フランス Helianthe tubereux/Topinambour
  • イタリア Girasole del Canada/Topinambur
  • スペイン Aguaturma

菊芋はキク科ヒマワリ属の多年草で、食用になるのは塊茎の部分です。
(多年草とは:種子が発芽・開花してもすぐに生涯を終えず、株が越冬(または夏越し)して翌シーズン以降も萠芽・開花し、数年このサイクルを繰り返す植物のこと)

名称の由来:花やイモの切り口が菊に似て、地下に多くの芋が出来ることなどから日本では菊芋(キクイモ)と呼ばれています。
花盛りの菊芋畑(9月中旬)
花盛りの菊芋畑(9月中旬)
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菊芋ってどんなもの?

菊芋は年間を通して育てられている多年草です。
地下茎の終わりや根茎の途中に塊茎が作られます。塊茎は瘤状で大きいものでは7.5〜10cm、小さいものでも3〜5cmに成長します。食用となるのはこの部分です。

茎は直立し1.5〜3mに成長します。茎には粗毛が生えており、手で触るとざらざらとしたかんじがあります。
収穫された菊芋
収穫された菊芋

広卵形の葉はのこぎり状のぎざぎざがついており茎の下部では対生(2枚が向かい合う)しますが、上部ではすべて互生(互い違いに生える)しています。葉の大きさは5〜7.5cmほどの大きさです。

9月〜10月には直径6〜8cmほどの鮮やかな黄色の花を咲かせ、塊茎が育ち始めます。

厳密に言うと7〜8月頃開花するのが「犬菊芋(Helianthus strumosus)」、9〜10月頃開花するのが「菊芋(Helianthus tuberosus)」ですが、塊茎が大きく育ち、食用として利用されるのは後者の方です。
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菊芋の特長

菊芋(キクイモ)の塊茎は見た目じゃがいもに似ています。しかしじゃがいもと違う点は70-80%を占める水分と炭水化物を除いた成分が、でんぷんではなくイヌリンが多く含まれているという点です。
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菊芋の利用法

★ 健康食として
イヌリンを含む菊芋の特長から、健康に気を使う人やベジタリアンに人気があります。世界各国にいろいろなレシピがあります。

★ アルコールの生産
フランスでは、アーティチョークがワインとビール生産に使用されていますが、キクイモからもエタノールとブタノールを作り出すことができます。 植物からエタノールを作り出す費用はガソリン価格よりも高くなってしまう現状からあまり実用化はされていないようです。

★ 果糖生産
果糖は蔗糖より可溶性であり、蔗糖よりも1.5倍もの甘さがあるので糖のとりすぎに気を使う人には適した糖であるといえます。
現在多くの果糖はとうもろこしから生産されていますが、菊芋からも果糖を作ることは可能です。しかし生産過程でのコストがまだかかりすぎることから現状では行われていません。
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菊芋に含まれる成分

菊芋100g中の成分 菊芋100g中のミネラル・ビタミン含有量
廃棄率30%
エネルギー35 (kcal)
146 (kJ)
水分81.2g
たんぱく質1.9g
脂質0.2g
炭水化物12.9g
イヌリン2.2g
灰分1.6g

(注意) 表示される値は、可食部100g当たりに含まれる成分を表す。
(注意) 青色数値は暫定値を表す。
(注意) mcgは、マイクログラムを表す。

参考文献
『五訂増補 日本食品標準成分表』
文部科学省の科学技術振興調整費研究「食品成分データベースの仕様等作成に関する実証研究」他

※イヌリンという概念が日本に無かった時代は、カリウムやタンパク質等それまで解明されていた物質以外の、残った部分をイヌリンとしてきました。現在は菊芋研究の先進国であるドイツの分析方法に移行しつつあり、イヌリンの表示量が増える傾向にあります。しかし、成分の測定は測定時期・品種・産地などにより、結果に違いが出ますのでご了承下さい。
ミネラルナトリウム2mg
カリウム630mg
カルシウム13mg
マグネシウム13mg
リン55mg
0.2mg
亜鉛0.3mg
0.16mg
マンガン0.05mg
ビタミンα-トコフェロール0.1mg
β-トコフェロールTr mg
ビタミンB10.07mg
ビタミンB20.05mg
ナイアシン1.7mg
ビタミンB60.05mg
葉酸7mcg
パントテン酸0.41mg
ビタミンC12mg
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菊芋の歴史

菊芋(キクイモ)の原産地は北アメリカとも南米とも言われています。
海外での名前の由来としては諸説あります。
1605年にフランス人探検家サミュエル・de・シャンプランが、米マサチューセッツ州ケープコッドのネイティヴ・インディアンが栽培している菊芋を食べ、アーティチョークのような味だと思いフランスに持ち帰りました。
後の1633年にはイタリアでも菊芋が広まりました。当時は"Girasole(向日葵という意味のイタリア語)アーティチョーク"と呼ばれており、その"Girasole"が"エルサレム"と聞き間違えられ、その後欧米では"エルサレム・アーティチョーク"という通称で呼ばれるようになったという説が一つ。

アーティチョークと菊芋 またフランスやドイツ、イタリアでは"Topinambour"や"Topinambur"とも呼ばれています。これについては東ブラジルのトゥピナンバ族の名前(Tupinamba)が由来ではないかという説があります。このことが原産地が北米/ブラジルのどちらかに特定されない要因ともなっているようです。

ただ英語名の"アーティチョーク"という欧米人に親しみやすい野菜の名前がついていたことが、人々に抵抗なく受け入れられる要因の一つとなったのは間違いなさそうです。

しかし、菊芋が広く食べられるようになったのは1772年にヨーロッパ中に起こった飢饉の時でした。厳しい環境でも比較的栽培が容易な菊芋は栄養源として利用されることとなりました。さらに第二次世界大戦中には、配給カードがなくても購入することができた食物だったという理由で、多くの国で食べられるようになりました。
現在でもヨーロッパでは多くの菊芋を使ったレシピがあります。

菊芋と野菜 日本で初めて菊芋が食べられたのは、幕末から明治の初め頃といわれていますが、注目を浴びたのは、欧米と同じ第二次世界大戦の時。食糧難の中「作付統制野菜」に指定され、国民の飢えをしのぐ代用品として配給され広まることとなったのです。

20世紀になりエドガー・ケイシーが菊芋について画期的な発表をし、その後科学的にイヌリンが含まれていることが証明され、現在ではベジタリアンなど多くの人に健康食品として親しまれています。
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菊芋の栽培と保存方法

天候 季節によって寒暖の差が大きい環境が最適でイヌリン成分も豊富になるとされています。しかし年間の1/3以上霜が降りるような地域は栽培には不向きです。

比較的様々な土壌で生育可能です。できれば少しアルカリ質の土が望ましいでしょう。粘土質のところでは収穫量は少なくなります。反対に湿気が30%以下の土壌では収穫率が良くなります。

植え付け 塊茎(種芋)を植えつけるのは地温が7℃以上になる春に行います。土は5cm〜10cmかぶせます。株の間は30cm以上あけてください。植え付け後10-17日で発芽します。

除草 菊芋はとても元気な植物で他の雑草をそれほど気にする必要はないでしょう。収穫時に邪魔になりそうな雑草などを取り除くぐらいで大丈夫です。除草剤も特に必要ありません。

病気 ほとんど病気にかかることもありません。報告されているのは菌核病で、この病気にかかると茎や塊茎が腐敗してしまいますがほとんど心配はないと思ってよいでしょう。

収穫 9月〜10月に花が咲き始めると塊茎が成長をはじめ、茎や葉が枯れる11月ごろには収穫ができます。あとはじゃがいものように根についた塊茎を収穫します。

保存 必要量以外は収穫せずに地中にそのまま置いておくのが最適な保存法です。加工せず常温でおいておくと短い期間で腐ったり、ひからびたりしてしまいます。どうしても収穫して長持ちさせたい場合は高い湿度で0.5℃〜1℃の温度に保たれた環境で保存しましょう。種芋にするものも同様に地中での保存が望ましいでしょう。冷凍すると種芋として使えなくなってしまうので注意しましょう。
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